H峠

私の友人の話です

K君は、新米で運転手の仕事をしていて
いつも夜中に出てへ行き、日中に帰って来る
そんな生活をしていた中で、体験談を教えてくれました。

ある日、スポットで急遽I県まで行く仕事が入りました。

この頃のK君は、子供が生まれるため休みを取らず、どんな仕事もやっていました。
会社から地図をもらい、荷を積み夜の23時に車庫を出発しました

今回は、2台で行くことになりもう一人の先輩と列をつくり走っていたそうです。

先輩の誘導で、普段はあまり使わないH峠へ入って行ったそうです。

2人は無線機で世間話をしながら走っていました。
相手が話しているときは、マイクを放し自分が話すときはマイクを握る
そうやり取りするそうです。

生まれてくる子供の話など、話は盛り上がっていたとき、

先輩の話を聞いてるなかで
うぅぅぅぅぅぅ

微かに女性のような、小さな声がしたそうです。


>>また、彼女でも乗せてるんだろう<<

そう思っていたそうです。

その後、何かやり取りしていたらふとおかしいなと思っていました。

彼女がいるのに、こんな話してていいんだろうか?

そこでK君は、先輩に話をすることにしました。

彼女乗せてるのにいいんですか?
愛想尽かされますよ?

そう話したそうです。

少し間が空いて

えっ?誰も乗せてないよ?
その時も何か小さい声で内緒話しているように聞こえていました

K君はまた、からかってるのだろう。
そう思っていたら

K君こそ、奥さん乗せて可哀想じゃん
さっきから声聞こえてんぞ~


思いもよらない返事が返ってきました

俺、誰も乗せてないっすよ


すぐそう返事をしてマイクを放すと

ザーっとノイズが入ったまま何も返事が返って来なかったそうです。

あれっ?○○さん?

おかしいなと思った時、
ン――――

何か、小さく唸ってるような声がしました

なんだ?
そう思い、もう一度先輩を呼ぼうとすると、大音量でお経を唱えてる声にK君はビックリしてマイクを落としてしまいました。

車もブレーキを踏み、少し蛇行させて前を見ると、先輩の車も同じくブレーキをかけながら蛇行していたそうです。

丁度、峠の頂上あたりで少し広い場所で2台とも、止まったそうです。

お経は止まず、まるで車内で大人数のお坊さんがお経を唱えてるような
そんな中で、K君はハンドルにつかまり動けなかったそうです。

どんどんどんどんとお経の声が大きくなったと思ったらピタッと止まりシーンと静寂になり、自分の呼吸だけが聞こえてました


K,今のうちに逃げるぞ!!

先輩の声がして、前を見ると急いで発進しました

なんだ今のは?
そう、先輩の声がしてすぐK君は返事したそうです。

が、自分がマイクを握った直後に

~ヤ~~メ~ロォォォォォォォ
女性のおぞましい声がすると
また、お経が車内に響きわたり、

K君は出来るだけスピードをあげ峠を下りました

未だになり響くお経を聞きながら走ってカーブを曲がると、ふと光が見えました

ぽつりと民間のような、門構えがみえましたがクルクルと光が回っていたそうです。

その家の丁度門の前を通り過ぎた時

ヤメロ!!ギィヤァァァァァ

耳を塞ぎたくなる叫び声がしたと思ったら、また静寂になったそうです。

なんとか峠を下り、やっとの思いでコンビニまでたどり着きました。

車を降りた後、しばらく無言でいたそうです。
先に口を開いた先輩が、自分の体験を話したそうで、K君と同じ体験でしたが
一つだけ違う事がありました。

あの民家を通り過ぎたとき、葬儀の後みたいで門が空いていて、建物の中をみた時に、闇夜に浮かぶようにぽつりと若い女性の遺影が飾ってあり、なぜか顔までハッキリ見えた…と

それを聞いて、不気味でしたが少し納得はいったと。
あの光はそれで、クルクルと回ってたんだなと

ただ、疑問が余りにも多かったのですが
恐怖による疲れなのかあまり深く考えられなかったそうです。

丁度、掃除のために外に出てきた店員が余りにも真っ青な顔をして座り混んでいた2人に話かけてきたそうです。

店員さんは、具合が悪いと思ってたそうで、2人の話を聞くと考えるような素振りをした後に
あの峠に民家なんかありませんよ?
だって、あそこは岩盤で家なんか建てられるような場所ないし

そう、聞いたそうです…

その後は、お酒と塩を購入して、車、自分と振りかけ、明るくなるまでその場所を動かなかった。

そんな体験を話してくれました。
その時、K君はぽつりと言っていました。

その民家通る時、時計を見たら2:22分だったと。
声はきっと自分にはトラウマになってるかな…と